『ウェブ時代をゆく』を読んで中二病を発症しそうになる

ちまたで話題の『ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか』を読んでみた。


第一印象は、梅田望夫氏による強烈なアジテーション。今だから多少の冷静さをもって読めるが、もし十代の頃この本と出会っていたら、あるいはIT企業に勤めて最初の挫折を感じた頃に読んでいたら、明日にでも退学届や退職願を出してしまったかも。そういった意味では何百年も昔から数多くのミュージシャンや作家や詩人達が説いてきた「決められたレールの上ではなく、自分の道を歩いて行け」みたいな手垢のつきまくったメッセージにも読める。


だが、実はそれほど単純なことではない。これを読んで中二病を発症しそうになった人(自分も含め)は、けものみちに踏み出す前にちょっと考えたほうが良い。
日本のソフトウェアの世界で独立することはとても厳しい。独立しても取引先は以前の職場で仕事内容もそれまでと同じ、リスクだけ背負わされたかたちの個人事業主や、イノベーションとは縁遠い業務システムのコーディング&テスト工程をSIerから何重にもマージンを引かれた単価で請け負う零細開発会社というパターンは多い。そしてまた、日本では一度失敗したら再起はとても難しい。


この本から読み取るべきは、もともとものすごく頭の良い著者が、どれほど慎重に計画を立てて、どれほど綿密に情報を集めて、どれほどありとあらゆる手を尽くして今の経営コンサルタントの地位を獲得したか、だと思う。ここには書かれていないが、著者の歩いてきた後にはちょっと運が悪かったり、ちょっと慎重さが足りなかったりした者達の膨大な屍の山があるはずなのだ。


という感想を持って読んでいたら、最後の20ページくらいで少し印象が変わってしまった。著者は決してベンチャーを推奨しているわけではなかった。むしろベンチャーには否定的で、それとは似て非なる「スモールビジネス」を提案していたのだ。スモールビジネスの定義はまだはっきり分からないが、自分の能力を最大限に組み合わせて、とりあえず食っていける程度のニッチを確保するようなことらしい。


はたして日本でスモールビジネスが成立するのか分からないが、株式公開以外のゴールがあることを明言したのは、今現在けものみちを歩いている人達にとって重要な指針になるように思う。