ウィキペディアがCCライセンスになって変わること

ウィキペディアのライセンスがGFDLからクリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCL)に変わるということで、どういうメリットがあるのか考えてみました。まあ自分は法律家ではないのであやしいところはありますが。

Wikipediaのライセンスがクリエイティブ・コモンズに - ITmedia News
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0905/22/news039.html

 
ちょっと考えて思いつくのはこんなところです。 
(1) ライセンス条件が誰にでも分かりやすくなる
(2) ウィキペディアのコンテンツの再利用がちょっとだけしやすくなる
(3) ウィキペディアに情報を集めやすくなる
 
まず、とりあえずGFDLは難解なのでシンプルなCCLの方が普通の人は使いやすいってかなあということ。GFDLは、コンテンツに適用するライセンスの中でも特に変わっていて、かなり独特の内容になってます。もともとマニュアルや教科書みたいな実用書的なテキストを想定したものらしく、テキストで公開された内容を書籍化するときの条件を凄く具体的に書いている特徴があります。ソフトウェアで言うと、元のテキストがソースコード、出版用にレイアウト整形されたものが実行ファイルみたいな感じで別の扱いになっていたりして、GNUらしい思想が見えます。あと、複製は100部以下と101部以上で扱いを変えていたり、改変するときは履歴の表示だとか、題扉に何を書くとか、改変したら推薦文を削除せよとか、細かいルールが多いので、どこか途中で権利がわからなくなるような事故は防げますが、その分面倒くさい感じは否めません。
 
CCLは、その点シンプルだし、コモンズ証みたいなサマリも用意してあるため、法律家以外の利用者に優しいと思います。ただし、今回適用されるCCライセンスはCC-BY-SAなので、いわゆるGPL汚染みたいなライセンスの派生による注意点はほとんど変わりません。SA(継承)がついてるということはCCLになってもライセンスは派生します。(まあソフトウェアと違って、あまり商用製品の部品として再利用されるものでもないから、さほど深刻ではないですが)
 
ところで、CCはすごくシンプルなルールで、NC(非営利)とかND(改変禁止)とかすごく分かりやすいものの、SAだけはちょっと難しい気がします。SAのありがたみが感じられるのは、改変の改変、つまりいわゆる「三次創作」を作るときだと思います(コピーじゃなくて改変ね)。普通は三次創作を作るときは、ひとつ前の二次創作だけではなくて、その親にあたる原作の作者からも許諾を受ける必要がありますが、それってすごく面倒だし、コンテンツの普及を妨げる原因にもなります。そのため、原作者が「このライセンスを変えないならn次創作全部許諾するよ」と宣言するのがSAなのだと思います。ちなみにSA(とND)がついていないCCLの場合は「このライセンスと同じか、より厳しくするならn次創作全部許諾するよ」と解釈できるので、どこかで誰かがフリーなライセンスの連鎖を止めてしまう可能性があります。なので一見SA付きの方が良いように見えます。
 
でも、やっかいな点がひとつだけあって、それは「SAがついたコンテンツを他のコンテンツと混ぜる場合、まったく同じライセンスで公開する必要がある」ということです。たとえば、今回ウィキペディアがCC-BY-SAになるわけですが、アンサイクロペディアのライセンスはCC-BY-NC-SAなので、これら二つのコンテンツを混ぜて出版するようなことはできません(たぶん)。そんなわけで、ウィキペディアのコンテンツを再利用したり出版したりするときは相変わらず少し難しさがあると思います。
 
逆にウィキペディアに情報を集めるとき、つまり投稿者のオリジナルではない文章や写真をウィキペディアに持ってくる場合は、CCLになることですごくメリットがあります。こういう場合、これまでは原則として元のコンテンツもGFDLである必要がありましたが、今後は代わりにCC-BYやCC-BY-SAのものが投稿できるようになると思います。現在CC-BYやCC-BY-SAで公開されているテキストや写真は膨大な量があるので、それらをそのままウィキペディアに持ってくることができるというのは、今からちょっと楽しみだったりします。これからはウィキペディアも写真や挿絵が増えてくるかもしれません。