KORG MS-20パッチパネル操作完全マスター
KORG MS-20はもう30年も前のシンセサイザーであるにもかかわらず、最近でも人気が高く、ソフトシンセとなってiPad版のiMS-20やVST版が販売されています。このMS-20の最大の特長といえるのが自由度の高いパッチパネルで、アイデアしだいで非常に多彩な音を作ることができます。とはいえ、パッチパネルは適当に操作してもなかなか思うような音にならず、マスターするには仕組みをしっかり理解する必要があります。
そんなわけで今回はMS-20のパッチパネル操作をまとめてみました。
MS-20の信号にはCV(無段階制御信号)、トリガ(2段階制御信号)、SIGNAL(音声信号)の3種類があり、それぞれにIN/OUTの区別があります。パッチ操作は、原則としてCV OUTをCV INに、TRIG OUTをTRIG INにというように同種の信号のOUTからINに接続します。
各入出力端子をこれらの信号種別で分類した図を以下に示します。黄色がCV、赤がトリガ、水色がSIGNALとなります。またOUTは矢印で、INは丸で示してあります。
パッチパネルは、レイアウトから見て三段に分けると考えやすいと思います。
まず、上段の一列は各種モジュレーションのCV入力で、出力される音に直接影響する部分です。
中段がモジュレーション信号生成部です。ここで生成した様々なかたちの制御信号を上段につないで音を作っていきます。中段部はレイアウトが込み入っているので色分けしてみました。それぞれの役割は後述します。
下段はESPと呼ばれる外部信号入力部です。実機の場合はここにギターやマイクをつなげてそこから生成したSIGNAL、CV、トリガを上のパネルに接続して音を作ることができましたが、ソフトシンセの場合、SIGNAL OUTやNOISEを接続するくらいしかできないのがちょっと残念です。(プラグインエフェクト版のMS-20FXでは他のソフト音源をESPに入力した効果が得られます)
以下に各入出力端子を説明します。画像中に記入した番号と一緒に見てください。
出力
シンセサイザーから最終的に出力されるSIGNALです。SIGNAL OUTはESPを通してからEXT SIGNAL INにフィードバックするような使い方ができます。
1 | SIGNAL OUT | 最終的なSIGNAL出力 |
8 | PHONE | ヘッドフォン出力。通常は使用しない |
モジュレーション入力
2 | TOTAL | VCO1,VCO2,HPF,LPF全てに影響するCV入力 |
3 | FREQ | VCO1とVCO2のピッチ変調CV入力 |
4 | EXT SIGNAL IN | VCO出力にミックスする外部SIGNAL入力 |
5 | CUTOFF FREQ(HPF) | 低音域をカットするフィルター(VCF)のCV入力 |
6 | CUTOFF FREQ(LPF) | 高音域をカットするフィルター(VCF)のCV入力 |
7 | INITIAL GAIN | 音量コントロール(VCA)のCV入力 |
MG
LFOと表記する方が一般的ですが、数Hz程度のゆっくりとした周期の変調信号を生成します。
9 | MG OUT(SAW) | MGが生成する三角波/鋸波CV出力 |
10 | MG OUT(PULSE) | MGが生成する矩形波/パルス波CV出力 |
EG
ADSRで設定するエンベロープをCVとして出力します。エンベロープはキーボードからだけではなく各種トリガによって発動することができます。また反転したエンベロープも出力できるため、たとえばフィルターを開くEGを反転してフィルターを閉じる効果を得るようなこともできます。
11 | EG1 OUT | EG1のエンベロープCV出力 |
17 | EG1 REV OUT | EG1の反転エンベロープCV出力 |
12 | EG2 REV OUT | EG2の反転エンベロープCV出力 |
19 | EG1 TRIG IN | EG1の発動トリガ入力 |
20 | EG TRIG IN | EG1,EG2の発動トリガ入力 |
VCO
VCOの生成する音の音程を規定するCV入力です。デフォルトで内部接続されているKBD CV OUT以外をつなぐと、メロディ楽器ではなく効果音のような音になります。
13 | VCO2 CV IN | VCO2の音程制御用CV入力 |
14 | VCO 1+2 CV IN | VCO1とVCO2の音程制御用CV入力 |
KBD
キーボードやホイールの操作をCV、トリガとして出力します。
15 | KBD CV OUT | キーボードから入力された音程情報CV |
21 | KBD TRIG OUT | キーボードの打鍵によるトリガ出力 |
28 | CONTROL WHEEL | コントロールホイール操作のCV出力 |
29 | MOMENTALY SWITCH | モーメンタリースイッチ操作のトリガ出力 |
S&H
階段状の変調信号を出力します。昔はピコピコした未来的なコンピュータ音を生成するのによく使われましたが、今となってはレトロフューチャーな音に感じます。INにはSIGNALとCVの両方が入力可能で、入力信号によりSIGNALまたはCVを出力します。S&Hを使うときは3箇所の入出力端子にすべて接続する必要があります。
16 | S&H CLOCK | S&Hのタイミング制御信号入力。一定間隔で発生させるようMGの出力を接続することが多い。 そのためCV INと分類しましたが正確にはトリガINです |
22 | S&H IN | S&Hの入力(SIGNAL/CV)。ノイズを接続するとランダムな効果を得られます |
23 | S&H OUT | S&Hの出力(SIGNAL/CV) |
MVCA
モジュレーション用VCAです。CONTROL INにEGやMG、CONTROL WHEELなどを接続して、IN→OUTに接続したCV信号の効果のかかりぐあいを制御することができます。MVCAもINにはSIGNALとCVの両方が入力可能です。MVCAを使うときは少なくともINとOUTの2箇所の入出力端子に接続する必要があります。
18 | MVCA CONTROL IN | モジュレーション用VCAのコントロール入力 |
24 | MVCA IN | MVCAの入力(SIGNAL/CV) |
25 | MVCA OUT | MVCAの出力(SIGNAL/CV) |
NG
ピンクノイズまたはホワイトノイズを生成します。生成したノイズはSIGNALまたはCVとして使用可能です。ノイズで変調した音もまたノイジーになるので、基本的に音を汚すために使用します。
26 | PINK NOISE | 高調波成分を含まないノイズ |
27 | WHITE NOISE | 高調波成分を含むノイズ |
ESP
外部から入力した信号にちょっとした加工を加えてSIGNAL/CV/トリガとして出力します。
30 | ESP SIGNAL IN | ESPで加工する入力SIGNAL |
31 | ESP AMP OUT | LEVEL処理後のESP SIGNAL出力 |
32 | ESP BPF OUT | LEVEL,FILTER処理後のESP SIGNAL出力 |
33 | ESP CV OUT | LEVEL,FILTER処理後のESP SIGNALの音程変化をCV出力 |
34 | ESP ENV OUT | ESP SIGNALの音量変化をCV出力 |
35 | ESP TRIG OUT | ESP SIGNALの音量変化をトリガ出力 |
これらの関係をあるていど頭に入れてからオリジナルのマニュアルやセッティングチャートの例を見ると理解しやすいと思います。
MS-20 Monophonic Synthesizer : 取扱説明書
MS-20 Monophonic Synthesizer : セッティング・チャート
慣れてきたら上記のマニュアルにある各CVの仕様を意識すると色々と応用ができるようになると思います。CV出力には-5V〜+5V、0V〜+5Vなど微妙な違いがあり効果が異なります。またトリガは2段階のCVとして使うこともできますし、逆にMGの出力をTRIG INにつないで連続的にトリガを発生させるようなこともできます。セオリーから外れた使い方では、SIGNALやPHONE出力をCV INにつないで特殊な効果を出すようなこともあるようです。
それでは今夜はこの曲でお別れしましょう。Patch and Go!
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