怒るマネージメントが失敗する理由

仕事で罵倒するように怒ることに関していくつかブログエントリーを見かけました。

関係者に対して敬意を払うことを忘れず、問題が出てきたとしても次からそうならないように工夫して行き、自分にできることは極力取り組んで成果を出し、互いにリスペクトできる関係を保ちながら物事を良い方向に進めていくのが仕事の基本だと思うのだが、口汚く罵ってプレッシャーを与えることをスキルか何かのように勘違いしている人が幅を利かせたりしているのが日本のエンタープライズ業界の競争力向上の妨げになっているような気がしてならない。切れて怒りを露わにすれば失敗は少なくなるだろうが、新しいチャレンジへの意欲も同時に摘み取ってしまうところが罪である。


小野和俊のブログ:人を萎縮させるやり方はその人の価値を下げる

 
このへんのことについては前々から思うところがあったのでちょっと書いて見ます。
これまでいろいろな会社で働いてきましたがやっぱり中には怒る文化の会社もありました。別室で諭すようなやつじゃなくて、フロアの真ん中で激怒するようなやつ。誰かが激怒した後って怒った人も、怒られた人も、まわりの人も集中力がすっかり落ちて仕事の効率が悪くなるのになんでこんなことするんだろうと不思議に思ってました。
 
そこでわかってきたのは、怒ることでうまくまわる会社というのもあり、そういう会社には二種類あるんじゃないかということです。
 
ひとつは、あまりにも能力が低い社員がいる場合。
能力が低すぎて戦力にならず、また向上心もない社員でも法的に守られているので、簡単に辞めさせるわけにはいかず、上司としては怒るぐらいしか手がありません。会社が自分に期待する成果は何か、そしてその成果を出すにはどうすべきか、ということを自分で考えられない部下に対して、怒られないように動きさえすれば自然と良い働き方になるよう、誘導するように怒るものです。このような環境の部下はそのうち何も考えなくても良い動きができるようになるか、あるいはストレスで退職してしまいます。どっちにしても会社にとっては良い結果です。ブラックですね。
 
もうひとつは一流と言われる大企業に多いのですが、ものすごく優秀な社員がいる場合です。
ものすごく優秀な社員は、自分の能力の一部を使うだけで成果を出してしまいます。そういう部下に対して、やっぱりものすごく優秀な上司は、成果に満足しないふりをして激怒し罵倒します。そうすることによって全力で仕事に取り組むように仕向けます。怒られた方の部下は、もともと特別優秀なためプライドも高く、負けず嫌いで、しかもタフで、逆境を克服してしまうだけの十分な能力を持っています。そのため全力で仕事をして信じられないような成果を上げてしまいます。もともと優秀な人がひとりひとり全力で仕事をするので、こういう会社は競合他社からするとちょっと追いつけないくらい凄い企業になります。宗教っぽいですけどね。
 
上記以外の大半である、特別能力が低くもなく、特別能力が高くもない人に対しては激怒することのメリットはほとんどないんじゃないかと自分は思います。社会人としてまともな感覚を持っている普通の人は、自分の能力の範囲で最善を尽くして仕事をします。そういう場合、怒るよりも冷静に目的や理由を説明する方が効率的ですし、ミスがあったときは誰かをつるし上げるのではなく、普通に最善を尽くしてもミスが起きてしまった原因を検討する方が効果的です。
 
よくある悪いパターンは、前述のものすごく優秀な会社出身の人が起業して普通の社員を抱えたような場合です。この場合、最善を尽くしても普通の成果しか出せない普通の社員のことを理解できません。怒るマネージメントをすることで社員の潜在能力を引き出せると思って空回りしてしまいます。社員は社員で普通に頭が良いので、自分が一番パフォーマンスを出せる普通のマネージメント方法を知っていて、どうしてこの上司はそういう普通のマネージメントをしてくれないんだろうと感じ、ますます噛みあわなくなります。そして信頼関係が失われれば失われるほど怒るマネージメントは逆効果になります。
 
そんなわけで、こんなこと書いてるとそろそろ誰かに怒られそうなので終わりにします。